要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 孤閨の深夜、孤独な情事。

 梁に跨がるロープの輪を見つめ、私は肺の奥深くに空気をしまい込んだ。そして踏み台を上り、頭を輪に潜らせ、足を宙に置く。
 途端に迫り来る気道を塞ぐ圧迫感。当然、脳は酸素をくれと言う。けれど、私はそれを聴き入れるどころか踏み台を蹴り倒そうと足を伸ばした──……。

「……はぁ……はぁっ……」

 気が付くと、私は脳のワガママを聴き入れていた。踏み台に足を着いた所為で酸素が肺に過剰流入。何度か噎せた後、溜息を一つ吐く。
 そんな私に、安堵を滲ませて脳が言う。“また”死に損なったね、と。

「はっ……ははっ……ハハは……」

 零れる自嘲じみた笑いは、生きたいと願う脳への冷笑。だって、このまま呼吸を止めてしまいたいと思う私を、脳が“いつも”邪魔するんだもの。

 それは、酷く不愉快。

「何してるんだ!?」

 こめかみに拳銃を押し付ける私を見て、貴方は狼狽して叫んだ。差し込む陽が眩しく、清々しい朝のこと。

 私が孤独に過ごした夜、貴方は誰を愛していたの?
 私を闇に置き去りして、貴方は誰を愛していたの?

 ほら、また脳が邪魔をする。
 私にこんな醜いことを考えさせる。傷付くのは私だから考えたくないのに、余計な詮索を脳が要求する。

 それは、酷く不愉快。

「脳が邪魔なの」

 今後、貴方が他の誰かを想うことはないだろう。だって私、これから貴方の網膜にこの姿を焼き付けるんだもの。

 それは、酷く愉快。

 
ばーん。

FIN.


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