要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 俺は今、死のうとしている。

 解雇通告を受けて3ヶ月、妻は俺の失業を未だ知らない。だから今日も弁当をこしらえ、笑顔で送り出してくれた。

 玉子焼きに野菜の胡麻和え、アスパラガスのベーコン巻き。検診で中性脂肪が引っ掛かって以来、弁当には緑が増えた。妻は低血圧で朝に弱いのだが、弁当を作り損ねたことは無い。
 それに引き換え、俺は一端にスーツを着込んで出掛けるも行く当て無く、只ぶらぶらと街を逍遥するばかり。果ては、疲弊を装って帰宅する。

 何と不甲斐無い。
 生きる価値も無い。

 そうして、俺は今、解雇された会社の屋上にいる。怨みを晴らす、なんて大層な理由はないが、怨みが無いと言えば嘘になる。
 解雇された所為で俺は死ぬ。会社が俺を殺すんだ。後悔すればいい、罪悪を感じればい──

「さっさと死ねよ」

 背中の圧迫を感じた時にはもう、身体は宙に飛び出していた。ちらりと見えた背後。其処に居たのは、鎌を携えた黒装束。

「……ったく、テメェの死亡時刻はとっくに過ぎてんだっつーの。次がつかえてんだ、グズグズすんな」

或る失業者と死神
人間の不景気、死神の繁忙期。

FIN.


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