要するに死亡率99%の短篇作品集です。


 生命の循環は絶えず廻る。
 それは太陽が昇っては沈むが如く、特に取り立てるまでもない常識。誰もが知っている、無情で単調な生命の移ろい。

「ヒッ……来るなァッ!!」

 人間は浅ましく、愚かで傲慢な下等生物。穢らわしく、普段はその顔を見るだけで吐き気がする。ただ、恐怖と絶望に彩られた人間は美しく、極上に美味。

「……おめでとう」

 ──「今日」が誕生日の誰か。

 特別に祝う相手などいないから、とりあえず君の誕生日を祝うことにしよう。君が生を受けてしまった、残念極まりないこの日を。
 生きとし生ける者、その全ては誕生した瞬間から、その先に「死」を運命付けられている。それにも関わらず、人間は一歩一歩、確実に「死」へ近付いていくこの日を祝う。
 それは、なんと滑稽で、なんと皮肉なことか。思わず人間に哀れみを感じてしまいそうだ。

「じ、慈悲をっ……神さ──」
「おやすみ」

 ──「今日」が命日の誰か。

 生まれ落ちてから、来る日も来る日も着々と迫り来る「死」に怯えながら、「今日」まで長らえた生命。人間のあらゆる欲望に塗れて穢れきった魂。
 そんなものを救済することなど出来やしないし、救済するつもりも更々ない。ただ、食物連鎖に乗っ取って頂くだけ。

「あっ…………………」

 僕の餌は、肉でも野菜でもない。僕の餌は、穢れた人間の体内を巡る赤黒い血だ。

「……やっと黙ったか」

 生命の循環は、無情で単調な生命の移ろい。「慈悲」など有る訳がない。それにも関わらず、顔面蒼白のこの男、「慈悲」とは中々に面白いことを言う。人間らしい他力本願の極み、と言ったところか。

「御食事は済まれましたか?」
「あぁ。コレを片付けておけ」
「畏まりました」

 闇夜に紛れて漂う生臭さは、夜明けには消えていることだろう。この人間の「死」さえ、漂う異臭のように瞬く間に風化する。
 人間の悲しみなど表面的で薄い。何もかも失った悲しみに暮れるようで、数日も経てば何事もなかったようにこれまでの日常を取り戻す。慈悲を請う割に無慈悲なものだ。

「陽が昇り始めましたね」
「……あぁ」

 黎明の暗闇に、地平線を走る朱色が際立つ。けれど、西の空は未だ深い闇色で、光が届くまでは当分掛かりそうだ。

「闇が失せる。明ける前に退散だ」
「御意の通りに」


ヒトは僕をそう呼ぶ。

FIN.


BOOKMARKBACKNEXT


⇒作品艫激rュー
⇒モバスペ脾ook
TOP