要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 点滅する信号を見て僕は駆け出し、君は立ち止まった。横断歩道を隔てた僕等は、言葉も交わしてないのに同じタイミングで左右を確認する。目が合った時、それが可笑しくて思わず互いに吹き出した。
 普段は交通量の少ない道路だから、地元の人間は赤信号でも平気で渡る。僕が「こっちにおいで」と手招きをすると、君は笑みを浮かべて駆け出した。何てことのない日常だけど、ささやかな幸福。
 君がもうすぐこちらへやって来ようという時、僕の視界の端に現れた鉄塊が笑顔の君を連れ去った。それは、瞬きすら出来ない刹那の出来事。
 鉄塊が走り去った方を見れば、アスファルトの上に醜い肉塊が転がっていた。血の弧を描いて、地面を散らかしている。
 アレが何なのか僕には分からない。そんなことより、君は何処だろう。君はイタズラが得意で、後ろから僕の視界を覆って「だぁれだ?」というのが十八番。今日もそれをやるつもりか、と先を見越して僕が振り返っても君はいなかった。ただ、凄惨な現場に青ざめた人々だけがそこにはいた。

 ──まさか。

 現実逃避していた思考が、ようやく現実に目を向ける。信じたくない。いや、信じられない。アレが君だというのか?

「あっ……」

 プツン、と僕の脆弱な精神を束ねていた紐が切れるような音がした。

「うわァぁぁあアアああッ!!!!」

 僕は彼女の元へ駆け出した。その瞬間、転がる肉塊から生前の彼女がぬらりと起き上がる。
 亡霊というものであろうか? 犯人への恨みで現れたのかもしれない──大丈夫だよ。僕が犯人を、君の仇を討つから。
 微笑む僕に君は微笑み返し、華奢で美しい指をすらりと上げた。人差し指が、文字通り人を差す。まっすぐ、指の先にいる僕を。

「何で──」

 道路に飛び出した僕の視界に、またしても入り込んで来る鉄塊。脳を介さない脊髄反射が働く間もなく、僕の身体は宙を舞った。

 そう。君の生命を奪ったのは、紛れも無い僕だった。「こっちにおいで」と、僕が手招きをしたのだ。

その日、僕死んだ。
アスファルトの上で結ばれた血は、
来世のふたりを繋ぐ赤い糸になる。


FIN.


BOOKMARKBACKNEXT


⇒作品艫激rュー
⇒モバスペ脾ook
TOP