要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 気が付くと、澄み切った青は血の色に染まっていた。あと小一時間もすれば血も光も消え失せる。魑魅魍魎が蠢く夜がやって来るのだ。あいつ等はそう、いつも僕の脳に忍び込んで神経細胞を食い散らかす。
 そうして暁。その頃には魑魅魍魎はおろか、この僕さえ見当たらない。ただ、正常な僕が穏やかな朝を迎えるだけ。

 仰向けの状態で窓外へ目を遣ると、少し高い位置に電線が見えた。日中は何処に姿を隠していたのか、夥しい数の鴉たちが電線の上に肩を並べている。

「はははっ……」

 彼等は血染めの空を泳ぐ死神。
 黒い羽衣に身を隠して、今日も誰かの生命を奪いにいく。ほら、耳を澄ませば今日の獲物は誰だ? なんて掠れ声で言っているのが聴こえて来る。

「ヒャは……ははは……」

 別に面白い事などない。ただ、ただただ途方もなく可笑しいだけ。
 笑い転げて見上げた天井、そこに在る女の顔。ニタリと、酷く陰気で粘着質な笑顔が不快だ。

「ははっ……あ……っ」

 空はますます朱を拡げていく。浮遊感と気怠さを纏う身体を襲うのは、一瞬の快楽と激しい頭痛。
 虚構のモノが視えてしまう、現実と非現実が融け合った此処こそが僕のリアル。

 伸びる青白い手は僕を地獄へ引きずり込もうとする使徒。窓外では、死神たちが此方を見て笑っている。
 そうか、今日の獲物は僕ってわけか。

 僕を殺すのかい?
 否、殺せるのかい?

「あはははははっ!!!」

 お前たちには無理だよ、僕は誰にも殺せやしない。だって死なないんだから。
 青白い手を振り払って、僕はベランダの柵に足をかけた。冷たい風は僕を撫で、部屋の中へと吹き込んでいく。

 愚かな鴉共は、誰が本当の死神なのかを知らない。無知は罪だ。ならば罰を与えなければ。
 高見の見物を気取るお前たちに、本当の地獄を、恐怖を、死を与えてやらなければ。

 僕は両手を拡げると、血染めの空へ飛び出した。その刹那頬を伝ったのは、微かに残されていた僕の欠片。


届かぬ涙、僕の欠片。

FIN.


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