徒然なるままに綴った短篇作品集なのです。




「ハナビラ?」

 君の声に従って、雲がのんびり泳ぐ空を見上げた。
 確かに、花弁が舞っているように見える。ふわふわと降りてきたそれを捕えると、瞬く間に体温に溶けていった。

「風花っていうんだよ」
「へえ……」

 風に吹かれて山を越えてくる花弁のような雪──風花。
 穏やかな陽気に寄り添って、季節は春へと移ろい始めていた。こうして雪に触れられるのも直に終わる。だが、景色が多少変わっても、僕の隣に君がいるのはお決まりで、

「綺麗だね」
「……うん」

 僕にしてみれば、美しいものに感じ入る君がいちばん綺麗なのだけど。

 雪を追って無邪気にゆらゆら動く瞳。ぼうっと彼女を見つめていると、不意に此方を向いた瞳と視線が絡んだ。

「あっ……」
「見すぎ。」
「ごめ──」

 ふわりと近付いてくる香りが、僕の肩に手を掛けて背伸びをする。



 僕は目を見開いたまま、彼女が踵を着けるまで見つめていた。肩から離れていく熱。溜め息を一つ吐いて、艶やかな微笑は僕を見上げた。

「帰ろっか」

 そういえば、女は男よりオトナだって誰かが言っていた。女はませてるし、いつでも男より一枚上手なのだそうだ。
 例を上げるとすれば、今がそれ。

「…………、うん。」

 空を見上げると、唇に落ちた雪が少しだけ火照りを冷ました。

 天候は晴れ、そこに舞うは風花。


この熱、君が冷ましてよ。

FIN.



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