要するに死亡率99%の短篇作品集です。



「とあるモラリスト曰く“恋は燃える火と同じで、絶えず掻き立てられていないと持続できない。だから希望を持ったり不安になったりすることがなくなると、たちまち恋は息絶える”のだそうだ」

 二人の出会いは風俗営業法をまるで無視したナイトクラブ。
 互いの素性を知る前にカラダの相性を知るような恋であったからこそ、高濃度の酸素によって着いた火が一瞬にして激しく燃え上がるように情熱的であったのだけれど、その一晩に勝るドラマチックに欠けた恋が燻るのもまた一瞬で。移り気な男が去った部屋に帰れば、彼によく似た男児だけが女を出迎えた。
 男の情欲を情愛と勘違いした結果が、自身が如何に浅薄であるかの具現が、健やかに動き回って朗らかに纏わり付く様が鬱陶しい。片親になって以降、我が子に募る感情は慈愛よりも憎悪の方が遥かに強く。あの男を彷彿とさせる仕草をする度、何の落ち度もない幼子にどうしようもない怒りが込み上げた。

「恋の果てに実ったからとてオマケではないのだよ。恋が息絶えたとき、捨てることを許されるのは相手から貰ったモノや思い出だけだ。私が言っていることの意味がわかるか?」

 女は、母は、昼も夜も暇も欲もなく働き通した。それでも生活は決して豊かとは言えず、わがまま盛りの幼子は来る日も来る日も疲弊した彼女に不平を吐露した。アレが欲しい、コレが欲しい、チョコレートが食べたい、ピーマンは食べたくない。
 履歴書の空欄を持て余す女が在り付ける職種など高が知れていて、けれど実入りの良い仕事は少なくなく。幸い容姿に恵まれていた女は、女を商売道具とする煌びやかな世界に足を踏み入れた。当初の目的はもちろん貧しさからの脱却だったのだが、慎ましさを売却したあたりから彼女の足は我が子から遠退いて行く。目先の享楽を選んで生きてきた女において、それは至極当然の結果であった。

「つまり、君は決して捨ててはならないものを捨てたのだ。私は君を軽蔑するよ。そして後生、君が再び“親”などと名乗らないことを願って君を起訴する」

 初老の検事に諭されて何を感じたのか、すっかり憔悴した様子の女は黙ったまま、ただ、ゆっくりと頭を垂れた。

児遺‐コイ‐
未熟な恋 未必の故意

FIN.


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