要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 黒壇のような黒髪、白雪のような肌、そして鮮血のような頬。
 例えるならばそう、君は現世に蘇った白雪姫。僕だけのプリンセス。

 あどけなさが残る顔立ちと肢体が以後のたった数年で失われてしまうかと思うと心底もったいない。肉体に艶めかしい凹凸を帯びた女は下品で浅ましいから、出来ることならばこの稀有で可愛らしい容貌のままでいてほしい。
 長い睫毛を濡らして君が再会を焦がれる御両親だって、本音では僕と同様のことを考えているに違いない。建前として健やかな成長を願っていながらも、これから訪れる思春期の煩わしさや、自立に際した離別を忌避したいに決まっている。だから僕はクロノスの如く、君の時を止めてしまおうと企んでいるのだ。

「もう泣かないでプリンセス、そんなに泣いては干からびてしまうよ。喉が渇いたろう? さあ、これをお飲み」

 やはり咽び泣いて喉が渇いていたのだろう、君は誘拐犯が差し出した林檎ジュースを躊躇なく飲み干した。その疑心を持たない幼稚さも、グラスを両手で携える幼気(いたいけ)らしさも本当に愛らしい。
 そう思って僕がうっとりと見惚れている寸暇に林檎の魔法が効いたようで。わなわなと手を震わせてグラスを落とした白雪姫は、喉を掻きむしらんが如く首筋に爪を立てた。

「死ぬ程おいしいでしょう? 砒素をたっぷり入れた林檎ジュースは」

 くつくつと嗤う僕を一心に見つめながらも、お転婆に乱れる様は年相応で本当にいじらしい。
 やがて藻掻き尽き、新たなコレクションの一員と化した君は現世に蘇った白雪姫。僕だけのプリンセス。

「さあ、硝子の棺桶に入れて愛でてあげようね。僕だけの白雪姫」


忘却の猟師 法網の狩猟

FIN.


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