要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 ──死刑の意義は?

「罪を犯した者への制裁であり、犯罪抑止および威嚇だ」

 ──人間の生きる権利を奪う権限は誰にもない。故に他人の生命を奪った者には同等の刑罰、すなわち死刑を執行するべきだという。しかし、僕等とて人間だ。その君に、この僕の、生きる権利を奪う権限があるのかい?

「無論だ。我々はその権限を国家より託されている」

 ──何と悍ましい汚れ役なのだろう、可哀想に。今この瞬間も、外界には結婚式を挙げたり子どもを授かったりしている人間がいるというのに、君は国家の命令で人殺しだ。まったく、死刑とは君への拷問か何かか?

「だから罪を犯した者への制裁で、」

 ──制裁の意味を知らないのかい? 制裁とは社会的規範に背いた者への懲らしめであり、懲らしめとは懲りさせること。さらに噛み砕いていえば、二度としまいと思わせること。わかるかい? 死んでしまっては何も思えない。つまり、死刑は制裁として成立しないのだよ。

「宣告で制裁の役割は果たされる。否応なしに後悔が押し寄せ、懺悔して改心するだろうから」

 ──それならば終身刑で十分だろう。

「死刑には犯罪抑止の役割もある」

 ──そうは言っても、死刑を廃止していないアメリカにおける殺人事件数は死刑を廃止したEUの2倍を越えている。また、抑止を狙って公開処刑を行う中国では最低でも2000件の死刑が毎年のように執行されているらしい。つまり、死刑があろうがなかろうが他人を死に至らしめる人間は必ず現れる。

「それは……」

 ──君はアルバート・フィッシュというシリアルキラーを知っているかい? 彼もまた死刑に処された人物だが、彼曰く死刑とは“一生に一度しか味わえない最高のスリル”だそうだ。わかるかい? 死刑は必ずしも威嚇には為り得ないということだ。

「“そういう事例”があったというだけで、必ずしも“そう”であるわけではない」

 ──おやおや、国家より権限を委託された君がそのようなことを言ってはいけないよ。まるで死刑の意義に疑問を抱いているように聞こえてしまう。

「疑問など皆無だ」

 ──そうかい。では最期に非科学的なことを言うが、君は幽霊を信じるかね? もしそのようなものが存在し、怨霊となって人間を死に至らしめられるならば実に喜ばしいことだと思わないかい?

「何故だ」

 ──つまり、要するに、だ。この僕が処刑され幽霊となれば、僕は永遠に誰かを殺し続けられるのだ。逮捕され、拘束され、こうして処刑されることもなく、僕は永遠に誰かを殺し続ける。

「馬鹿馬鹿しい。幽霊など」

 ──おや、知らないのかい? かのテッド・バンディは幽霊となって刑務所内を徘徊し、彼の生命を奪った電気椅子に腰掛けて微笑んでいたそうだ。目撃者は数多く、これが原因で看守を辞職した者もいたという。

「この世に幽霊など存在しない」

 ──なら試そうじゃないか、死した僕が君を殺せるかどうか。

「与太話は仕舞いだ。刑を執行する」

 ──楽しみに待っていておくれ。楽しみに、君は君の生涯を閉じるその日まで僕の影に怯えて生きるが良い。

「………、言い残す言葉は?」

 ──ないね。何せまたすぐに逢えるのだから。

See you again
13階段の果てに嗤う

FIN.


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