要するに死亡率99%の短篇作品集です。



「雨垂れる日は気分が落ち込んでしまって、つい空と一緒に泣きたくなるよ」

 まるで小洒落たセンテンスのような台詞。これを奏でるのは、実年齢の割には老成した貴方の声で。
 吐息の波紋拡がるカフェオレから視線を上げると、窓外の灰色をぼんやりと眺める先生がそこにいた。

「明日は晴れるそうですよ」
「そう。蜘蛛の巣を飾る雨粒が陽光を反射する様は、さぞ綺麗なのだろうね」
「……ああ」

 先生の感性や表現を他愛ない会話で感じ取ることが好き。
 同じ世界を、私のような凡人とは違う視点で見ている貴方が好き。

「ええ。綺麗だと思います、私も」

 ぽつりぽつりと、テンポの悪い会話は小一時間ほど続いただろうか。
 先生との他愛ない会話は好きだが、そろそろ発破をかけないと此方も困る。

「先生、そろそろ書けそうですか?」
「……ひとつ、頼んでも?」
「入稿は延ばせませんよ」
「ふふ、手厳しい編集さんだ」

 ──嗚呼、本当に綺麗。
 口元に指を添えて笑う姿は本当に上品で、こんな先生だからこそ洗練された文章が書けるのだと思う。

「それで、何です?」
「如何せん僕は想像のみで物を書けない凡愚、実体験を元にしなければ言葉に息吹を与えられないのでね」

 涼やかな瞳で捕らえられるだけで、いつかの「官能表現のお手伝い」を思い出して身体が火照っていく。
 何て淫らな身体だろう。そう卑下しながらも、つい唇や指先を見てしまう。

「だから君にお願いしたいのです、」

 先生は担当が長続きしないことで有名な方。周囲は先生を偏屈だと言うけれど、私は先生の執筆に対する直向きな姿勢を尊敬している。
 私には文才なんて微塵もないし、素敵な感性も持ち合わせていない。だからこそ、貴方の世界に私が映って、それを描いてもらえるなら何だってする。

「──ちょっと、殺されて?」


「君はぴくりとも動かなくなった。」

FIN.


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