要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 ねえ、どうして空が青いか不思議に思ったことはない?

 子供時分に誰もが抱く些細な疑問。
 僕のお父さんは「海の色がお空に映っているんだよ」なんて如何にもロマンチックな答えを示してくれたけれど、僕はあの頃から歪んでいて、本当は波長の短い青色が大気中の水蒸気や塵埃に反射しているだけだということを知っていた。だから、お父さんに求めていたのは子供の好奇心を育むような答えじゃなかったんだ。なのに。
 そんな子供騙しの戯言を吐くお父さんに虫酸が走って。だから、殺した。

 買い物から帰って来たお母さんは、血まみれの僕とお父さんを見て悲鳴を上げた。どさりと落とされた衝撃で、買物袋からトマトが転がり出る。完熟したそれはお父さんから溢れた液体にそっくりで、陳腐な表現だけど凄く綺麗だった。
 そうして、真逆の色を湛えたお母さんが「何てことしたの!」なんて叫ぶから、僕は首を傾げてこう訊いた。

 ──どうして殺しちゃいけないの?

 僕は思うんだ、大人は子供の疑問と真摯に向き合うべきだって。子供が抱く些細な疑問こそ、アカデミックな人間がその生涯を賭して研究する題目だったりするじゃないか。生物、自然、歴史、宇宙。大人は「理解力がない子供に難解な話をしても無駄」というようなことを言うけれど、本当は大人が子供の疑問に答えられないだけ。
 お母さんも例外ではなく、僕が尋ねた途端に怖い顔をしてこう言った。

 ──ダメなものはダメ!

 思わず笑って、溜息を吐いて、そして興醒めして。だから、殺した。
 だって、まるで「嫌だから嫌」と駄々を捏る幼児のようだったもの。つまりは根拠も何もない感情論。理路整然と明確な理由を述べられない否定なら、それは肯定と相違ない。要するに、殺しても構わないってことでしょう?

「ねえ、君は何て答えてくれるの?」


だから、殺す。

FIN.


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