要するに死亡率99%の短篇作品集です。



「たいへん御愁傷様です」

 鼓膜を振るわせる甘美な重低音。
 参列者の容姿に対する関心はもちろん、窺う間すらなかった私でさえ、その美声には顔を上げざるを得なかった。眼前にはそう、同じ人種なのかと疑ってしまうような美人がいて。

「こんなに若く美しい姉妹を遺しては、御両親もさぞ心残りでしょうね」

 薄い唇の隙間から漏れる言葉はその端々まで品があり、記帳する為に伏せられた長い睫毛はその一本一本まで優美であった。
 通った鼻筋も、淡い艶髪も、高い身長に適った長い手足も、そしてスタンダードな喪服さえも。貴方が所有し、纏っているすべてが貴方の美を形成する。
 そして、骨張っていながらも男性にありがちな無骨なそれではない細く長い指も、達筆な字も貴方に相応。

「ふふ、僕の名前がそんなに気になりますか? 珍しい名字ではありますが」

 呼応も侭ならないほど貴方に見惚れていた私は、セーラー服のスカートの裾をきゅっと掴んで頭(こうべ)を垂れるのが精一杯だった。

「御久しぶりですぅ、叔父様ぁ」
「おや。幼い頃に一度会ったきりなのによく覚えていてくださいましたね」

 重い葬儀に不釣り合いな甘ったるい猫撫で声を出して、これまた暗い葬儀に不釣り合いなアクションで妹は貴方に擦り寄った。
 甘え上手で見目好い妹に比べ、御世辞にも綺麗とは言えない私。性格も容姿に準じていて、良く言えば慎ましく奥床しいが、悪く言えば消極的な臆病者。そんなコミュニケーション能力の乏しさを歯痒く感じながらも、私はスカートの裾をぎゅっと握って二人を見送ることしかできなかった。

「今日はお疲れ様ぁ」

 その夜、一段落着いた私たちは居間で寛いでいた。広い屋敷に二人きり、そして其処に淋しく響く明朗な声。

「姉さんとアタシだけの家族になっちゃったけど、頑張って生きていこうね!」

 妹は昔から気立てが良く、他人に気を配ることに長けていた。だからこそ、両親を亡くして気落ちする私を気遣っての空元気。
 ──なんて健気で愛らしいんだろう。

 私はそんな妹に微笑み掛け、その腹部に刃を突き刺し、痛々しい呻き声を聴きつつ刃を抜いた。
 夥しい血を藺草に零しながら崩れ堕ちる寸前、最愛の妹は端正な顔を歪めて此方を見た。

「な……んでぇ……?」
「理由なんて分かりきってるじゃない」

精神病質的恋愛観
(これでまた貴方に逢える)

FIN.


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