要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 除倦覺醒劑の投与を経て今宵も飛翔。
 御國の為なら粉骨砕身、この身果てるまで戦います。

 おおよそ九分で到達せし地上六千米。眼下に拡がる火の海を痛ましく思いつつ、私はその海を泳ぐ敵機を視認した。その斜め下方に入り込み狙撃すれば、憎き敵機は闇に黒煙を溶かしながら沈んで逝く。これの見物客は無線越しに誉めそやす同胞たちと、蒼白たる月と、金髪碧眼を乗せた無数の機体。

 ──さあ、今宵の狩猟をはじめよう。

 夜空を駆ける数多(アマタ)の弾丸。
 一機、二機と敵味方なく機体が減って逝く中、後方で硝子の破れる音がした。其方に目を遣れば、偵察と航法を担う同胞が頭蓋に風穴を開けて臨終。飛び出した脳髄と体液が機内を汚している。

 多勢に無勢で劣勢は必至。
 無線を介して伝わる戦況は芳しくあらず、同胞の断末魔と冷酷な司令の混線は毎夜繰り返される恒例行事となっていた。とはいえ、慟哭しながら母や妻の名を叫ぶ断末魔は如何なものか。日本男児なら潔く散って逝け。

 そんな悠長で低俗な思惟の最中、ふと感じた引き金の不具合。どうやら、連射で生じた熱によって撃針が欠損したらしい。敵機に包囲されているにも関わらず射撃は不能。万事休す。
 だが、臆すること勿れ。まだ爆装──爆弾二発が残っている。二百八十節に及ぶ最高速度にて急上昇の末、私は眼下の闇に潜む敵機を爆撃した。
 次いで、己が機体を傾け右翼をもって斬撃する。誇り高き侍を先に持つ日本男児なら、これくらいの芸当は造作もない。後方を確認すれば、敵機は腹から燃料を垂れ流して墜落して逝く様相。

 残るは一機。
 だが、今の斬撃で右翼が損傷し、機体の均衡を保つことすら容易ではない。況して先程のように機体を傾ければ、均衡を崩して墜落することをも難くはない。然れど、日本男児が敵に背を向けて良いものか。敵前逃亡など士道不覚悟の嗤い種。末代までの恥となる。
 故にそう、操縦桿から手を離した私は大日本帝國民に似合いの格好で文字通り決死の攻撃を仕掛けるのであった。

「母さ……っ、天皇陛下万歳!」

METHAMPHETAMINE
闇夜に咲き誇りし大輪、
生命の終焉と共に散る。


FIN.


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