要するに死亡率99%の短篇作品集です。



「死にたいと言ったら、どうする?」

 事後の「ねえ」と、それに続く疑問文。趣味趣向に始まった質疑は、いつしか私を困らせる悪戯に変わっていました。

「一緒に死ぬ──と言えば満足?」

 背徳心と欲望に屈した私は、女を貪る情欲に溺れていきました。無論、この内に芽生えた恋情の果てなど高が知れています。
 女系の旧家に生まれた待望の男と、頼りの夫を亡くした独りの女。私達はあまりにも世間知らずで、そして、ひどく非力だったのです。

「意地悪ね」
「あんたが吐く台詞じゃないだろう」

 そう、意地が悪いのは女の方。深海の闇色に私を映しながら、女は網膜に焼き付いた亡き夫を見ていたのです。
 何しろ、此方に笑い掛ける遺影の前で私を求めるのです。それこそ、私が夫の代わりであるという何よりの告白でした。

「あんたには死んだ先で待つ男がいる。一緒に死んだら僕だけが孤独だ」
「………」

 私達はあまりにも世間知らずで、そして、ひどく非力だったのです。

「死にたいなら死ね。手伝ってやる」

 細い首に手を添えると、女は驚いて目を見開きました。
 身代わりにされることはもちろん、易々と夫の元に逝かせることも腑に落ちませんでした。だから、殺すつもりはなかったのです。いつまでも手元に置いて、いずれは妾にでもしてやろうと思っていたのです。
 女は目を細めると私の手首に指を絡めました。力なく握って、遊女の微笑。

「手伝ってちょうだい」

 この恋情の果てが幸福でないことはわかりきっていました。私がどれほど愛しても、彼女の心は結局この世に存在しない男のもの。

「殺して」

 硝子玉から涙を零し、私は静かに、どこまでも静寂を貫いて泣きました。

罪深き貴女に捧ぐ
挽歌
エレジー

FIN.


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