要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 春風にそよぐ葉、恋風に晒された僕。

 出逢いはほんの一瞬。電車の車窓に流れる景色の中、こちらに微笑み掛ける君をはっきり捉えたあの瞬間。この世に運命があるんだと確信した。
 その日から、君との逢瀬が僕の日課となる。君はいつも同じ場所で、どんな時間でも僕を待ち、そして微笑み掛けてくれた。けれども、僕等の逢瀬はある日突然断ち切られてしまう。ニューモデルの携帯電話を片手に、アホ面を晒すアイドルが君の定位置を奪ったからだ。

 僕は悲しみ、憤りを覚えた。そうして、僕等の邪魔をするもの、障害となるものすべてを排除しようと決意した。だってレンアイに障害は付き物、イベントは消化しないと次に進めないでしょ?
 軟派だと誤解されたくないから言わなかったけど、これでも経験は豊富な方。萌えるような恋なら何度もしたし、いつもハッピーエンドだったから君を喜ばせる自信もある。

 毒気の多い世界から君を守るためなら、僕は喜んで世界を敵に回す。レンアイはそうして成就し、ハッピーエンディングまで驀進する。
 三桁を優に超える経験値と攻略術によって、否応なしに読めてしまう展開。だからわかってる、此処で御姫様が吐く台詞はそう、あい──

「嫌! 触らないで、気持ち悪い!」

 悲鳴に似た甲高い声。それに続くのは、幾度と聞いた僕を罵り蔑む言葉たち。少し困惑して君の方を見ると、僕に罵詈を吐く下賎な女がそこにいた。
 デレを期待できないほどツンケンとした態度は、まさにバグ。すべて排除したつもりだったのに、真空管に入り込んでショートさせた蟲(バグ)がいたようだ。といっても、君の恋人だと法螺を吹いていた俳優も、君から自由を奪うマネージャーも、君との逢瀬を邪魔したアイドルも、君に迫っていたディレクターも、君に嫌がらせしていた女優も、君を芸能界に入れた母親も、君にたかっていた友人も、バグに成り得る蟲はみんなみんな排除したんだけど。

 君を守るためなら世界を敵に回すことも厭わない。そう思っていたのに、手の施しようがないくらい君はもう毒気に中てられていたらしい。
 悲哀なエンディング。最近は物語重視の泣きゲーが流行ってるし、サスペンス要素も含んだこれはこれでアリなのかもしれない。罵詈はいただけないが。

「あ。新作の恋ゲーやらなきゃ」

 鈍く光る暗赤色を纏ったステンレス。歪んで映るのは、終わったばかりの恋愛を他所に、新たなレンアイを始めた僕だけ。

コイスルオトコ
あーあ、三次元って不便。
(RESETできないんだもん)


FIN.


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