要するに死亡率99%の短篇作品集です。



「愛してるよ」

 その少女が生来はじめて囁かれた甘い言葉は、絶対禁忌の蜜の味であった。というのも、それを吐いた人物は恋人や知人、まして犯罪者の類でもなく、彼女と血を分けた実の兄であったからに他ならない。

 兄は、幼少の頃より妹に只ならぬ愛情を注いでいた。家族愛といえば聞こえは良いが、彼の愛情は明らかにそれを逸脱していた。傍目にもわかるほど、彼女を個の女性として扱っていたのである。
 そして、いち早く気が付いた両親は彼等を離すべく画策する。策とはすなわち妹を里子に出すこと。これを知った兄は妹と離れたくないあまり両親をその手に掛けた。

 果たして兄は妹を己が手に抱いたのだが、その表情は何とも謂えぬ苦悶の色を湛えていた。

「……ひ、酷いこと、しない、で……。おにい……ちゃん……」

 途端に食道を駆け上がる虫酸。
 兄は、兄と呼ばれることに嫌気が差していた。妹が兄を兄と呼ぶことは正しい。けれども、それを超越して昇華した関係を求める彼にとって、その呼称はふたりを隔てる軛でしかなかった。

「おにいちゃんなんて呼ぶな!」

 不意を突く呶鳴り声に強張る妹の体躯。それに伴って交接器は収縮し、妹を繋ぎ止める兄の楔が締め付けられる。
 兄は少し声を漏らすと、恐怖のあまり声を押し殺して泣く妹を見下ろした。視界に入るのは可憐で憐憫な妹。過保護なまでに守ってきた天真爛漫な笑顔はなく、急に罪悪感に苛まれた兄は徐に唇を開いた。

「此処で報われないなら軛のない場所に逝こうよ──おにいちゃんと一緒に」

 兄の手がか細い白を絞めると、これまで諦観していた妹が暴れ出した。血流の滞った顔は赤らみ、声に成らない妙な音が口から漏れ聞こえてくる。
 先程よりきつい締め付けが快く、兄は獰猛な息遣いを漏らして猛然と律動を加速させた。

近親
君が生まれた日
僕は恋を知った


FIN.


BOOKMARKBACKNEXT


⇒作品艫激rュー
⇒モバスペ脾ook
TOP