要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 北風は吹き荒ぶけれど、流れる雲は途切れぬまま空を覆う。曇天の下、彼は空を仰いだ。
 冷えた風に流される雲は留まることを知らず、視界の右から左へと流れていく。灰色と世は無情。

 彼は名も無き奉公人であった。だが、それは過去の話。──と言うのも、穢れた甘露を貪る主人と、そのお零れにありつこうと媚びる者どもに制裁を加えたために彼は奉公人でなくなったのだ。今の彼は、俗に言う下手人である。
 善と悪はいつも紙一重。大義はあれど、真の正義は必ずしも存在しない。人間においては特にそれが顕著に現れる。
 人間の存在意義とは何か。それは、他人の踏み台になること。人間は人間の上に立ち、さらに我が身の上に人間を立たせる。
 人間が天の下に平等など、誰が言えよう。虚言だ。

「見つけたぞ、下手人!」

 穢れた権益に鉄槌を下そうとも、彼は元々主人の踏み台。主人の屍の上に立つことは叶わず、正義は権力に屈し、彼を悪と見なす。
 曇天の空は、真の甘露を零しはしない。世に仁政を執る天子がいないのだ。故に、天が零す甘い露もない。

「……天が嘆いていらっしゃる」

 無味の涙を流し、穢れた世を哀れんでいるのであろうか。それとも、あまりの滑稽さに笑い涙を零しているのであろうか。
 灰色に黒が滲み出す空は、下手人と権力の使徒を濡らした。

「切り捨て御免!」

 刃に血を吸わせて、彼は泥にまみれた。無味の涙が朱に染まる。

 ──嗚呼、世は無情。


世に大義は有れど正義は無し

FIN.


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