要するに死亡率99%の短篇作品集です。



 俺が狂っていることは疾うに知っていた。

 二人が出会った日を振り返っては「運命」だの「奇跡」だのとお前は笑う。だが、現実は残酷で「奇跡」はあっという間に時の波に押し流されていく。気が付いた頃にはもうずっと後方にいて、「偶然」程度にしか感じられなくなっていた。
 メール、電話、デート。思い出を増やし、身体だって重ねたのに、いつしかお前の心は離れていた。おおよそ他に好きな男でも出来たのだろう。
 俺は「運命」も「奇跡」も信じない。だから、別れへの抵抗も未練もあるはずがなかった──のに、現実には泣き崩れそうな自分がいた。

 大好きなお前が好きなものは、どんなものでも好きになろうと努力した。お前が好きだと言うから、嫌いだった俺を俺は好きになれた。
 俺の心を支配して、俺の中をこんなに乱して、お前は俺から離れて行くというのか。

 強情な俺はどこまでも格好ばかりをつけたがる。別れ際になって泣き縋る真似はしたくないし、涙すらお前には見せたくなかった。

「最後に抱かせろよ」

 煙草を灰皿に押し付けて、俺は最低な一言をお前に吐き捨てる。断ってくれた方が良かったのに、お前は有無を言わずに服を脱ぎ出した。
 俺から言い出したことだけど、黙って従うお前が腹立たしい。
 いつもの無邪気で子供っぽいお前は何処に行ったんだ。そんな冷めたお前はかわいくないし、最後になって初めて見るその表情はいらなかった。
 でも、俺から気持ちが離れても、この時だけはいつもと同じ。他の男に抱かれても、そんな風に鳴いたりするんだろ。

 ──むかつく。

 俺が狂っていることは疾うに知っていた。だが、俺をこうしたのはお前で、お前だから俺は狂ったんだと思う。

 好きなんだ、どうしようもなく。だから、俺を手放さないで。

 もっと俺を支配してよ。お前で俺を染めて、お前も俺に染まって。

「警察110番です。どうされました?」

「……俺、」

彼女を殺しました。
美しい君の血に染まる醜悪な僕は、
狂おしいほど君を愛していました。


FIN.


BOOKMARKBACKNEXT


⇒作品艫激rュー
⇒モバスペ脾ook
TOP