徒然なるままに綴った短篇作品集なのです。




 すっかり痩せてしまった枝を揺らす風は冷たく、私の身体ばかりか、ぽっかりと穴が空いてしまった心をも冷やしていく。嗚呼、寒い。とても寒い。

「此方の方が暖かいでしょう?」

 鉄骨とコンクリートの街の人間はよく、雪國で生まれ育った私にこう問うて来る。確かに気温は彼方の方が低い。毎日のように雪も降る。然れど、風は此方の方がずっと冷たい。此方の方が、ずっとずっと寒い。

「いいえ、此方の方が寒いです」

 そう言って悴む指に息を吹き掛けると、白い靄はふわりと漂って消えていった。見上げる灰白色の天上は厚く、重い雲を冷たい風が押し流していく。
 ふと、懐かしい煙草の匂いが掠め、其方に目を遣れど懐かしい姿はなく。少し草臥れたスーツを纏った中年男が、私の傍を足早に過ぎ去って行った。

寂寞の薫り
嗚呼、寒い。

FIN.



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