徒然なるままに綴った短篇作品集なのです。




 ひとの一生には、幸と不幸が等しく分配されているという。
 この法則が僕にも適用されるのなら、神様、あなたはどれほどの幸福を与えて下さるのでしょうか? こんなにも辛く苦しい人生を、如何にして幸福に変えて下さるのでしょうか?

 僕は、神様なんて信じない──……。

傀儡恋歌

「好きです」

 名前も知らない女の子は、蚊の鳴くような声でそう言った。俯き加減でも分かるのは、その子の顔が真っ赤に染まっているということ。
 スカートの裾を握り締めて、僕の返事を今か今かと待っている。その姿は可愛らしい、けど。

「僕の何処が好きなの?」
「えっ……」

 咄嗟に上がる顔。
 明らかに困惑の表情を湛えたそれは想定内。

「え、えっと……、優しくて……それで……」
「君に優しくしたことなんてあったかな? というか、君と接したこともないと思うんだけど」

 女の子は誰もが眉目秀麗な白馬に乗った王子様を待っている。周囲の人間は僕をそれだと評価するけれど、現実の僕はそれとは程遠い下卑た人間で。
 むしろ人間より人形に近くて。

「見てくれが好きでも構わないよ、ありがとう」

 愛玩としてしか存在意義のない僕を、どうやって愛するというのか。

「でも付き合えない」

 誰も愛せやしないし、愛される価値もない。
 彼女に別れを告げて、僕は早々に場を離れた。夕食は何にしようかな、なんて思考はとっくに別方向。

「何処に行くの?」

 校門を出たところで背後から聞こえたのは、耳に馴染んだ忌々しい魔女の声。
 竦んだ足は、主の意思も虚しく歩みを止めた。早く逃げたい。でも動けない。

「今日もオトモダチのところに行くつもり? いけない子ね」

 振り返らない僕の背に伝わる熱。捕らえられたが最後、人形は所有者に弄ばれるだけ。

「さあ、帰りましょうか」
「……はい、継母さん」

 ひとの一生に幸と不幸が等しく分配されるなんて嘘。彼女がいる限り僕は傀儡で、彼女の遊戯に心身を破壊されていく。
 こんな僕を、どうして幸福にできよう? 僕が乱れる様で快楽に溺れ、僕が壊れる様を娯楽とする彼女がいて、どうして人間でいられよう?

 神様、あなたに期待しないで願います。



FIN.



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