徒然なるままに綴った短篇作品集なのです。




 またこの季節がやって来る──冬。俺の大嫌いな季節だ。
 末端冷え症で、低体温、低血圧。俺より冬に適さない生物がいるだろうか? ああ、常夏の南国に引っ越したい。何でよりによって雪国に生まれてしまったんだ……。

「わあ、初雪っ!」

 ふと見上げれば、灰白色の空に雪が舞っていた。雪深い某国では、初雪を“天使の贈り物”というらしい。俺に言わせれば“悪魔の贈り物”だが。
 空から視線を戻すと、地上で舞い降りる雪を待ち構えるバカがひとり。両手を広げてくるくると回っている。

「神秘主義者か、お前は」
「何それー?」
「イスラム教の神秘主義哲学、スーフィズム」
「うち仏教だしー」
「無宗教だろ」

 仏壇がある家でクリスマスパーティー。そこに宗教の概念なんてない。
 つーか。神だろうが仏だろうが、いるなら雪を止ませてくれ。

「ぬあっ、目ェ回った!」

 神秘主義者は一晩中くるくる回っても目が回らないらしい。素人が玄人の真似なんかするから、と彼女を見ればよろめいて転倒する寸前。

「危ね──」

 冷気が頬を掠めるのと同時に、彼女の匂いがふわりと薫った。華奢な身体は俺の腕の中にすっぽりと収まって、奥手な俺にとっては白昼堂々恥ずかしい格好。

「う、キモチワルイ」
「吐くなよ」

 人前で手を繋ぐことさえ憚ってしまう俺だが、この状況では彼女を離すわけにもいかず。
 はあ、と白い息が風に流れていく。

「えーいっ!」

 バカみたいに──いや、実際にバカだけど──明るい声を出すと、彼女は俺の背に手を回した。

「離れろ、貧乳。」
「失敬な! Cカップあるんだぞ!」
「お、大声で言うなっ!」

 そんなこと知っ……じゃなくて!

「とにかく、離れ──」
「あったかいでしょ?」

 見下ろせば、頬と鼻先を赤く染めた彼女の顔。冷えた証。温かいとは言えないのに、自信たっぷりに口角を上げている。

「気休めだ。帰るぞ」

 そう言って、彼女を引き剥がす。
 冷やかされない内に帰ろう。そう思った、のに。

「あれれ、お顔が真っ赤デスヨ? あ、抱き着かれて照れちゃった? かわいいなあ、このやろう!」
「……寒いからだ、ばかやろう」


君がいる冬は嫌いじゃない

FIN.



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